研究分担者 |
堀 悦郎 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (90313600)
梅野 克身 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (90086596)
田淵 英一 富山医科薬科大学, 医学部, 講師 (70272911)
永福 智志 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (70262508)
田村 了以 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (60227296)
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研究概要 |
I.能動的実空間および仮想空間移動課題遂行中のサル海馬体および海馬傍回から記録した総数389個のニューロンのうち,166個(42.7%)が場所識別応答を示した(場所識別ニューロン)。これら場所識別ニューロンは,ラットの場所ニューロンに相当する応答特性を有し,特定の課題に選択的に応答することが判明した。これらのことから,各課題ごとに異なるニューロン集団により,実あるいは仮想空間が符号化されていることが示唆された。すなわち,各課題,あるいは各状況ごに異なるニューロン集団が形成され,各課題内,あるいは特定の状況下における事象は,各ニューロン集団に属する特定のニューロンの組み合わせにより表現されると考えられる。以上の結果は海馬体における情報表現が,各ニューロン集団が異なる座標軸系を表現する多重構造になっていることを示唆する。さらに,同時記録した163組のニューロンペアについて相互相関解析法を用いて解析した結果,特定の課題でだけ有意な相関を示すニューロンペアの存在が明らかになった。これら課題特異的な相互相関も多重構造仮説の妥当性を強く示唆する。 II.これら海馬体ニューロンの場所応答性から再現した認知地図(脳内に再現された一種の地図)も課題依存性に柔軟に変化した。また,これら認知地図の精度と課題要求性との間に一定の関係が認められ,神経心理学的研究結果から想定される海馬体の機能とよく相関していることが判明した。本研究結果やこれまでの動物やヒトの神経心理学的研究を総合すると,海馬体内に認知地図に相当するものが存在する可能性が高いと考えられる。
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