研究概要 |
実験動物の心・血管系に及ぼす環境温度の影響を明らかにすることを目的とし,テレメトリ-自動計測システムを用い,高温(33℃)及び低温(15℃)環境下におけるハムスター,モルモット及びウサギの血圧・心拍数・体温を測定した。さらに,各々の環境下における各動物種の血漿心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)濃度をラジオイムノアッセイにて測定し,心房筋細胞内のANP分泌顆粒を免疫組織化学的並びに電子顕微鏡学的に検索した。【結果及び考察】(1)血圧・心拍数・体温:何れの動物種共に低温暴露による変化は認められなかったが,高温暴露群ではモルモットのみ,血圧は正常値に比べ有意に下降した。何れの動物種共に,高温暴露後の心拍数に変化はみられなかったが,体温は有意に上昇した。(2)血漿ANP濃度:高温暴露24時間後のモルモットの血漿ANP濃度は,対照群に比べ有意に低値であったが,ハムスター及びウサギでは変化はなかった。何れの動物種共に,低温暴露による有意な変化は認められなかった。(3)免疫組織科学的及び電顕所見:高温暴露24時間後,モルモットの心房筋細胞は対照群に比べANP抗体に弱く反応し,電顕的にもANP顆粒数は対照群に比べ減少していたが,ハムスター及びウサギではANP顆粒に変化は認められなかった。低温暴露群において何れの動物種共に,心房筋細胞内のANP顆粒は対照群と差はなかった。以上の結果より,高温環境が心房筋細胞内のANP合成・分泌機序に与える影響には動物種差が存在し,モルモットでは高温暴露により血圧が下降するためANP合成・分泌が抑制されることが示唆された。
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