研究概要 |
本研究では,骨の適応的なリモデリングについて研究するために,非侵襲的な状況で骨に規定された荷重を負荷するラット脛骨の3点曲げ実験系,およびイヌ尺骨を部分切除した状況でイヌに運動させ残された撓骨に生理的な荷重を負荷させるイヌ撓骨の生理的荷重実験系の2つの実験系を開発した.そしてラット脛骨の3点曲げ実験系においては,静的な応力や動的な応力でも引張応力は骨形成に対して有効な刺激ではなく唯一動的な圧縮応力のみが骨形成に有効であることを示した.また応力の動的性を規定するのは,非荷重状態の継続する時間であり,非荷重時間が長いほど,そして荷重の繰り返し数が36回程度以上あることが,刺激として有効となることを示した.一方,イヌ撓骨の生理的荷重実験系においては,同一個体の経時的な骨形成状況をCT観察および骨の蛍光ラベリングにより解析し,荷重が増大しても骨は表面の全周にわたって生じるのではなく,撓骨の離断された尺骨側において特異的に生じることを示した.本来ならば2本の骨で支える荷重を1本で支えるのであるから,残された骨の失われた骨を向く側においては,圧縮応力が作用している可能性が高い.このことは現在ひずみ測定を行って詳細を検討中であるが,少なくとも全周で骨が形成されることは実験的に否定出来た分けであり,単に応力レベルが増大しただけでは骨形成に結びつかないことが明らかとなった. 以上の2つの実験系の結果より,適応的骨形成は動的な圧縮応力の作用のもとで生じることを示すことができた.
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