研究概要 |
薄膜(全反射)X線回折法のシステムを構築し,これを駆使することにより材料の表面における微細構造を解析することを本研究の目的とした。薄膜(全反射)X線回折法を用いれば,高分子表面の結晶構造,結晶化度,微結晶サイズなどの物理的な構造に関する情報が得られることになる。そこで,ポリ-α-オレフィンを初めとする汎用高分子,ポリマーブレンド,生体材料として利用されるポリビニルアルコール積層薄膜を取り上げ,それらの表面構造,界面構造の解析に成功した。 まず,薄膜(全反射)X線回折法のシステムの構築に取り掛かり,次いで,このシステムを用いることで,アイソタクチック・ポリプロピレン,アイソタクチック・ポリブテン-1等のポリ-α-オレフィンに関して表面の微細構造パラメーター(結晶化度,結晶配向度,格子定数)を追跡し,表面モルフォロジーを明らかにすることができた。その結果,表面構造がバルクとは異なり,たとえば具体的には結晶化度が低いなどの知見を得ることができた。これらの結果は,従来定性的に言われていた現象を構造パラメーターとして初めて定量的にとらえることができたことを意味し,学術上のみならず工業的にも極めて重要である。 さらに,ポリビニルアルコール薄膜およびその表面,さらには積層薄膜の界面構造を同手法を用いて解析することに成功した。 本研究でえられた成果により,高分子系生体材料表面について新規な定量手法を確立することができたことになり,当初目的を達成することができた。今後は構造情報と,抗血栓性などの材料表面の生体適合性の関連性の解明に関する研究を進める予定である。
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