研究概要 |
歯科領域で汎用されるBis-GMA(bisphenol-a-glycidyl methacylate)レジンあるいは生体由来の高分子アルギン酸ナトリウムやコラーゲンと骨親和性が非常に高いことて知られているリン酸カルシウム系セメントあるいは生体活性ガラスセラミックスであるAWGC粉末を混合することにより骨との結合性を有し,従来のセメントの3倍の強度を持つ骨セメントをDDSの基剤として骨組織への薬物送達を検討することにより,カルシウム濃度に依存し薬物放出を制御するシステムを構築することができる.また,人工骨の表面がこのような性質を持つことは,骨との強固な結合能を確保することや精密な薬物放出制御をめざした. アパタイトに転移する機能を有する生体親和性セメントにBis-GMAを混合することにより,薬物の放出を制御する.本薬物送達システムを骨粗しょう症治療に応用するための基礎的検討として抗生物質セファレキシンのin vitro溶出特性とセメントの処方を検討した.まず,アパタイトセメントにBis-GMAを混合し,その高分子含有量を調節し,薬物放出を制御するシステムを確立する。Bis-GMAマトリックス中でのアパタイトの析出過程はカルシウムとリン酸と生体高分子との相互作用により著しく影響されることから,セメントの空隙構造や細孔中の薬物拡散係数に影響を与えることが推察される.高分子の含有による自己硬化作用の抑制について応力試験機を用い検討する.硬化後の試料のX線回折を測定し,セメント中の結晶化度を測定する.また,高分子含有量を変化させることにより,セメント構造を変化さ薬物放出速度の制御を行い,薬物放出とセメント処方の定量的な関係を求めた.これらのセメントシステムを用いin vitro試験として一定薬物濃度のアパタイトセメントを異なるカルシウム濃度の擬似体液中で行い,薬物放出を測定し、カルシウム濃度と薬物放出速度の定量的な関係を検討し、これまでに得られた骨粗しょう症病態時と正常時の血中カルシウム濃度での高分子含有セメントからの薬物放出とその放出機構を推定した.生体中での異なる粒径のセメントからの薬物の生物学的利用能を求めるためこれら薬物血中濃度を薬動学的に解析した.
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