研究概要 |
本研究は、一八世紀初頭に誕生したイギリス風景式庭園の誕生前史、および現代的影響を美学思想史的に解明する。それにより近代美学の理解を深め、近代自然観や現代の景観設計の批判的考察を目指す。具体的には、従来行ってきた一八世紀イギリス庭園論の精査を継承・発展しつつ、以下の二つの庭園思想を文献実証的・思想史的に研究、その内的論理を剔刔する。(1)風景式庭園誕生をもたらした一七世紀イギリスの庭園論、特にピューリタン革命期の科学思想に関係する庭園(農業・園芸)書。(2)一九世紀における風景式庭園の変質を示すレプトンとラウドンの理論。現代的意義を考える際に必須の田園都市、ランドスケープ・アーキテクチャーに関する理論。 平成11年度は、一八世紀の風景式庭園論が変質し、一九世紀的な理論に変化してゆく過程を、イリュージョニズムの解体、ピクチャレスク美学の受容、レプトン、ラウドンの庭園論等を中心に研究し、現代の環境設計を踏まえ研究全体の総括を行なった。その成果は、様々な機会に公表した。特に平成11年5月末〜6月初のアメリカでの学会発表は、イギリス風景式庭園の一九世紀以降の伝搬を考える上で実りが大きく、それを改訂版は学会主催者により採択されて、英文の書物Dowler,Carubia,Szczyglel(eds.),Contours,Contortions,and Contradictions:Revealing Gendered Topographiesへの掲載が決定した。また同年10月におけるポーランド・グダニスク大学での連続講演でも本研究全体の成果を公表し、美学界の重鎮、ボーダン・ジェミドック教授を初めとする学者達の評価を得たと信ずる。さらにそれらは東京大学出版会第42回刊行助成公募に採択され、平成12年6月出版予定である。
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