これまでの研究から、Fynチロシンキナーゼ欠失マウスは、学習行動に異常は認められないが、恐怖反応の異常、エタノールにたいする感受性の異常、痙攣に対する感受性の異常を持つことが明らかになっている。今回はFynチロシンキナーゼ欠失マウスの攻撃性について、レジデント・イントルーダーテストと、ターゲットバイティングテストを用いて検討した。レジデント・イントルーダーテストでは、Fynチロシンキナーゼ欠失マウスの臭いかぎ行動には異常は認められなかったが、Fynチロシンキナーゼ欠失マウスは対照群のマウスに比べ、雄同士の攻撃である侵入者にたいする攻撃は低下していた。また、ターゲットバイティングテストでは狭い筒に拘束されることによって誘発されるターゲットを噛む攻撃は逆に亢進していることが見出された。 レジデント・イントルーダーテストはoffesive aggressionの、ターゲットバイティングテストはdefcnsive aggressionのテストとされているが、この結果は、Fynチロシンキナーゼは攻撃行動のタイプによって、それぞれ異なる影響を及ぼしていることを示唆している。この攻撃性に関する知見と従来の知見(恐怖の亢進)はFynチロシンキナーゼが恐怖反応だけでなく、攻撃行動の発現にも関与していることを示している。 また、本年度はマウスの社会的行動を定量的に解析するシステムの予備的検討を、岡崎共同研究機構生理学研究所の施設を利用して行った。
|