研究概要 |
平成10年度の調査研究においてはサポートを受ける側からの調査の必要性が示唆された。そこで平成11年度は,留学生がどのヘルパーにどの程度,援助を求めるかという「被援助志向性」の研究に焦点を絞り,被援助志向性に関連のある変数を抽出することが目的とされた。ヘルパーは,専門的ヘルパーとして「留学生担当教官」,役割的ヘルパーとして「日本語教官」,「指導教官」,ボランティアヘルパーとして「同国人留学生」,「日本人学生」が設定された。援助領域は,道具的サポート領域として学習・研究,健康,対人関係,住居・経済領域が,社会情緒的サポート領域として情緒領域が設定された。それぞれのヘルパー・領域毎に被援助志向性が質問された。調査対象者は中国,台湾,韓国の留学生423名で,調査期間は99年10月12日〜12月10日であった。291票を回収し,257票を有効回答した。有効回答率は60.8%であった。質問紙は日本語で作成され,韓国語と中国語に翻訳された。翻訳の適切さはバックトランスレーションにより確かめられた。 その結果,一部を除いて,援助を求めるときの不安である「ヘルパーに対する呼応性に関する心配」が被援助志向性と負の関連,ソーシャルサポートと被援助志向性は正の関連が認められた。この二つの変数に介入することで,被援助志向性を高めることができることが示唆された。領域やヘルパーによっては、被援助志向性と性差,年齢,自尊感情,日本語能力などの変数が関連していた。一部の被援助志向性には,自尊感情の高さとの関連が認められ,自尊感情(自尊心) 脅威モデルの「傷つきやすさモデル」が支持された。この結果から,(1)留学生の被援助志向性を高める心理教育プログラムの検討,(2)留学生の被援助志向性を尊重し,ヘルパー同士の連携を高め留学生を援助する体制づくりの必要性が指摘された。
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