研究概要 |
本研究では,養護学校小学部に在籍する発達年齢2歳の知的発達障害児において把握された,自他の領域分化群4名および未分化群5名の,2群の発達プロセスについて,3年間の縦断的な検討を行った。その結果,自他の領域の分化過程と,積木構成課題や描画模写課題などにみられる認知発達,および検査場面や生活場面においてみられる言語発達との関連について,以下のことが示された。 第1に,自他の領域未分化群においては,認知的能力は自他の分化過程に先行して発達し,その認知的能力の高さが,結果として自他の分化を惹き起こすことが示された。 第2に,自他の領域分化群においては,すでに自他が分化していることが2歳頃の構成能力などの認知的能力の獲得を促進するが,自他の分化と対比的認識の形成や3歳以降の認知的能力の発達との関連があるとは考えにくい。対比的認識の形成や3歳以降の認知的能力の発達は,むしろ言語発達との関連があることが示された。 これらの研究成果は「養護学校小学部に在籍する発達年齢2歳の知的発達障害児における自己-他者領域の分化過程-縦断的研究II:3年目の報告-」(鳥取大学教育地域科学部紀要教育・人文科学第1巻第1号)にまとめた。尚,現在4年目の実験を実施中であり,自他の分化レベルと鏡やビデオを用いた自己と他者の表情認知との関連,および発達年齢2歳の健常児における自他の分化過程との比較について検討し,明らかにしていく予定である。
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