研究概要 |
本研究は,集団の性別構成比が勢力の性差をどのように生み出すのかを検討しようとするものである。本年度は,課題の性別適合性が集団の性別構成比の効果をどのように調整するのかについて検討することが目的であった。課題の性別適合性の実験的操作が成功しなかったため,課題の性別適合性と同様に状況を女性にとって有利もしくは不利にする要因として,女性の権威モデルの在・不在を操作し,昨年度と同様の意思決定ゲーム実験を行った。具体的には,大学生被験者211(男82,女129)名を5〜6名から成る小集団に分け,各集団内でコミュニケーションおよび意思決定を必要とするゲーム課題を遂行させた。その際,各小集団の性別構成比を操作した。さらに,組織体従業員への調査研究として,伝統的に女性適合的な職業とされ,女性が圧倒的多数である看護職の男性および女性に職場におけるストレス調査を行った。 結果は次の通りである。(1)勢力認知に関して,男性多数群の男性と均衡群の男性は,統制群(女性)より自分の発言権が低いと認知していたが,リーダー出現率や課題達成度には性別構成比および女性権威モデルの効果は認められなかった。(2)女性権威モデルが実験室内に存在しない場合は,存在する場合に比べて,少数派女性および少数派男性がコミュニケーションの困難さを認知していた。(3)職位や勤務時間の長さ等を統制して看護職の男性と女性を比較したが,ストレスの程度に差は認められなかった。以上の結果から,課題の性別適合性が中性的である場合,女性より男性の方が性別構成比の影響を受けやすいこと,また,女性権威モデルの存在は,おそらく少数派の権威モデルとして認知されたため,男女にかかわらず少数派メンバーのコミュニケーションを容易にすることが示唆された。ただし,組織体従業員に同様の結果が認められるかどうかについてはさらに調査対象者を追加して検討する必要がある。
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