研究概要 |
幼児の語意味限定に及ぼす周辺状況の影響を規定すると考えられる要因を検討するために3つの実験を行った。実験1では周辺状況の日常性の影響を検討した。被験者は5歳児50名であった。日常性の高い周辺状況を伴った事物(檻に入った象)を提示する条件と日常性の低い周辺状況を伴った事物(車に乗った象)を提示する条件を設定し,"これはXです"と新奇語を命名し,その意味限定を査定したところ,いずれの条件でも周辺状況を含めた事例にXの意味を帰属させやすかった。日常性の影響は認められなかった。 実験2では周辺状況の多様性の影響を検討した。被験者は5歳児50名であった。多様性の高い周辺状況を伴った事物(檻に入った象(標本事例)の周りに、別の檻に入った象や檻に入っていない象,他の動物がある)を提示する条件と、多様性の低い周辺状況を伴った事物(檻に入った象のみ)を提示する条件を設定し,実験1と同様に新奇語を命名し,その意味限定を査定したところ,多様性の高い条件では,Xの意味を周辺状況を含めない象の事例のみとして帰属しやすく,多様性の低い条件では、周辺状況を含めた事例にXの意味を帰属しやすかった。語意味限定への周辺状況の多様性が影響が確かめられた。 実験3では幼児の語意味限定の及ぼす周辺状況の相対的大きさの影響を検討した。被験者は5歳児50名であった。相対的に大きい周辺状況を伴った対象事物(大きな檻に入った象)を提示する条件と相対的に小さい周辺状況を伴った対象事物(小さい檻に入った象)を提示する条件を設定し、同様に新奇語を命名し、その意味限定を査定したところ、大きい周辺状況の条件ではXの意味を周辺状況を含めない象の事例のみとして帰属しやすく、小さい周辺状況の条件では周辺状況を含めた事例にXの意味を帰属しやすかった。語意味限定への周辺状況の相対的大きさの影響が確かめられた。
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