研究概要 |
親同一性の確立過程について研究を行った。 まず,10年度に実施した親同一性尺度による質問紙調査の結果を詳細に分析したところ,親同一性には〈親としての一貫性〉,〈親役割の受容〉,(親としての独自性〉,〈親としての安定性〉,〈親としての社会性〉,〈子ども優先性〉の6つの次元が存在することが見出された。さらに,以下の4点が明らかになった。(1)親として一人前であるという意識は親同一性の6つの次元のうち〈親としての一貫性〉とのみ関連しており,子育てを楽しんでいるという意識は〈親役割の受容〉,〈親としての一貫性〉の2次元と関連していること。(2)無職の母親は有職の母親よりも〈親役割の受容〉,〈子ども優先性〉の次元が高いこと。(3)高学歴の母親はそれ以外の母親よりも〈親としての一貫性〉,〈親としての独自性〉の次元が高いこと。(4)長子の年齢が低い母親の方が〈親役割の受容〉次元が高く,複数の子どもを持つ母親の方が〈親としての安定性〉が高いこと。 ついで,母親同一性の確立過程をさらに詳細に分析するため,面接調査を実施した。幼稚園児の母親10名を面接し,現在までに2名の回答を分析した結果,以下の3点が明らかになった。(1)〈母親であることの最初の自覚〉に関しては,医者から妊娠を告知されたときという点で共通であったが,その受け止め方には相違があった。1人は医者からの告知に伴い「母親であること」を自覚し,もう1人は〈出産を契機として〉「母親であること」を自覚していたのである。(2)両者には〈本当の子育ては幼児期から始まる〉と考えている点,および〈親は子どもとともに育つ〉との母親発達観を持っている点において共通する認識が存在していた。(3)この母親発達観の一致は〈子育ての節目〉の報告にも見られ,"CO-発達"的な発達観が認められ興味深い。
|