研究概要 |
精神障害者の地域生活を支えるネットワークを作り,維持し,展開していく関係諸機関・施設,地域住民などによる効果的かつ効率的な援助方法・技術(=ケアマネジメント)の構築を図る研究を実施した。 精神障害者社会復帰施設(以下,施設)の精神科ソーシャルワーカー(以下,PSW)を中心に訪問・調査を実施した。比較的歴史があり,先駆的な活動を続けている施設に焦点をあて,併せて精神障害者地域生活支援センターのPSWも対象とした。上記施設等を訪問し,職員,またそれらを支援している人々,また利用者を対象とした聞き取り調査など(郵送による事前アンケート調査と訪問による聞き取り調査)をおこなった。 ケアマネジメント活動の成功例、失敗例を抽出し,精神障害者を生活支援するために必要な社会的条件,PSWのケアマネジャーとしての役割・能力などに焦点を当てて検討した結果,次のような事柄が判明した。 (1)PSWは,総じて精神障害者の生活支援には必要な方法・技術であるとの意識は高かった。 (2)施設よりも地域生活支援センターのPSWの方がケアマネジメントへの関心が高かった。 (3)しかし,PSWが実施するケアマネジメントの成否は,PSW自身のネットワークに依存している傾向が高い。 (4)(3)のPSWは経験年数が多いほど,ネットワークの密度が高いし,関係職種との良好な関係を保持しているが,PSWのオーバーワーク(時間外・休日出勤は当たり前で,症状再燃による緊急対応も少なくない)は無視できない状況である。 (5)PSWの個人的力量でケアマネジメント活動がおこなわれているが,これでは継続できるとは考えられない。PSWの労働条件などを整備しないと燃え尽きてしまう可能性が高い。 (6)精神障害者の地域生活支援に必要な社会資源やサービスの整備が喫緊の課題であり,これらの充実がないとケアマネジメントは有効に機能しないと考えられる。
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