この研究では、相手とのコミュニケーション上、意志疎通ができなくなった状態をコミュニケーションの阻害と定義した。実際に聾学校幼稚部の聴覚障害児のコミュニケーションを観察し、特にどのような場面でコミュニケーションの阻害が起こるのかということについての検討を行ったところ、いくつかの傾向をみることができた。 特に年中クラスにおいて阻害状態になることが多いことから、コミュニケーションの質的な変化が現れていることが示唆された。年長クラスと年小クラスのコミュニケーション方法の比較を行ったところ、年小クラスでは、伝わらないときには伝わらないままにする場面が多いが、年長クラスでは、様々なコミュニケーション方法を用いることにより、工夫を行っていることがわかった。 また、スムーズなコミュニケーションには発信側と受信側の役割交代が必要であるが、年中クラスにおいては役割交代がうまくいかず、このことにより阻害状況が発生することが多かった。特に発信を行うことが有意に多く、そのために阻害状況の発生が多いということが示唆された。
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