本研究の目的は、世紀転換期のイタリアにおける社会主義運動・労働運動の特徴を明らかにすることである。とくに、その特色とされる「改良主義」を、当時の第二インターナショナルやその指導的立場にあったドイツの影響としてではなく、イタリア独自の思想的・社会的文脈のなかで育まれたものとして理解し、考察する。 本年は、社会主義者オズヴァルド・ニョッキ=ヴィアーニの思想と活動を研究した。ニョッキ=ヴィアーニは、「社会主義」とは、労働者の権利、意識および生活の向上を労働者自身の主導する組織的運動によって追求することであるとし、イタリア社会党の母体となる「イタリア労働者党」の結成に大きな影響を与えた人物である。資料としては、前年度に集めたものののほか、ミラノ市立図書館、ミラノにある私立の財団による新たにニョッキ=ヴィアーニ自身の著作のコピーをとりよせた。 ニョッキ=ヴィアーニについて、私はすでに前年度に短い論文(伊語)を発表したが、今度はより詳細な日本語の論文を執筆する予定である。日本では、彼自身についてはもとより、当時のイタリアにおける社会主義運動・労働運動に関する文献自体がきわめて限られているので、そうした周辺領域も含めて紹介したい。
|