研究課題/領域番号 |
10710207
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
国文学
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
杉田 昌彦 静岡大学, 教育学部, 助教授 (50283320)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1999年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 源氏物語 / 本居宣長 / もののあはれ / 湖月抄 / 源氏物語年紀考 / 手沢本 / 物のあはれ / 宣長 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、手沢本『湖月抄』をはじめ、本居宣長記念館や東京大学本居文庫などに多数現存する自筆稿本・写本など宣長関係の文献を、主に『源氏物語』に関わるものを中心に調査し、紙焼資料などを収集するとともに、その結果得られた一次資料文献の内容を、コンピューターを用いて解析した。本年度は、とりわけ『源氏物語玉の小櫛』稿本や『源氏物語年紀考』稿本などの宣長の自筆稿本類に焦点を当て、その文献の内容の調査・解析を試みた。中でも『源氏物語年紀考』の第一次草稿本であると目される、本居宣長記念館所蔵の『源氏年紀考』と端書きされた小冊子の内容は注目すべきものであった。筆者は以前に、宣長が手沢本『湖月抄』首巻に付載されている一条兼良の「源氏物語諸巻年立」(旧年立)の記事と『湖月抄』の諸巻の本文を比較検討し、その結果を手沢本の「諸巻年立」のところに書き込むことによって、その年紀研究の最も基礎的な研究作業を行っていることを解明し得たのであるが、その基礎作業が直接的に『源氏物語年紀考』の自筆清書稿本中に窺える研究成果へと結実したと考えることは困難であった。今回、この『源氏年紀考』を調査・解析することによって、同書がその両者を結ぶ中間点に位置する稿本であることが判明した。特に、旧年立において誤認されていた竹川巻と梅枝巻の前後関係を確定する際に、この小冊子に様々な年表や図を記し、それらの作業を通じて得られた自説を書き留めるという研究段階が存在したことを明らかにし得たことは、宣長の源氏学の新たな実相を把握することに繋がったと確信する。その他、宣長の「物のあはれを知る」説の源泉を明確にするため、人情観や実情観などの近世期における文芸思潮の脈絡の究明に勤めると同時に、宣長における『源氏物語』という虚構世界の存在価値の認識の根底に、彼の家の宗教である浄土信仰と浄土教思想が色濃く影響していることなどを解明した。
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