研究課題/領域番号 |
10710265
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
文学一般(含文学論・比較文学)・西洋古典
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
秋山 学 筑波大学, 文芸・言語学系, 講師 (80231843)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1999年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1998年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 神話 / 神秘 / 解釈 / 伝承 / 教父 / 修道制 / 写本 / 異教 / 神話伝承文化 / 冥界譚 / 神殿構造 / 天上的体験 / 至福者の島 / 聖化 / 古代地中海世界 |
研究概要 |
2年間に及ぶ本研究の最終年度に当たる今年度の成果は、別掲のような諸論考にまとめられた。まず学位論文『神話・神秘・解釈』においては、西洋古典古代における神話伝承文学が、古代末期から中世初期におけるキリスト教世界での伝播の過程で、初期教父たちによる意義付けにより、次第に旧約聖書的な位相、すなわちキリスト到来以前における地中海文化圏固有の文化遺産として位置づけられたという点を明確にできたと考える。オデュッセウスやアエネアスによる「冥界下り」、犠牲の儀礼かつ公共奉仕(レイトゥルギア)としての悲劇上演、ヘシオドスをはじめとする叙事詩人たちの召命のプロセス、霊界/地上界の霊媒と化す盲目のオイディプスなど、古典神話伝承文学には、後のキリスト教に通底する諸要因を備えた多様な人物像と事象が秘められている。ギリシア・ローマ文学が異教文化という位置づけにもかかわらず、写体伝承を経て中世キリスト教期をくぐり抜けることができたのは、これらの要因のためであった。その際に、教父たちがギリシア語・ラテン語で著作を公にしたことにより、言語的位相においても、古典ギリシア・ラテン語がキリスト教神学をも盛るに相応しい器と化した。このような史観から記したのが論文「バシレイオスと「ルネッサンス」」である。そこでは、総じて9世紀以降に成立する現存西洋古典文献手写本をめぐり、当時の地中海東西の写字修道士たちの精神的地平が、ギリシア教父神学および初期修道制にまで遡ることを明らかにした。その中でさらに、修道制の父祖的存在であるバシレイオス像が、その弟であるニュッサのグレゴリオスによる位置づけを通じて旧約のモーセに比せられるものを持つに至り、総じて写字行為を、モーセによる律法授受に似た地平において成立させる可能性を披いたこと、また「出エジプトの原則」に照らし、異教文化の積極的利用へと向かわせたことを仮説として提示した。
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