研究課題/領域番号 |
10720034
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
刑事法学
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小田 直樹 広島大学, 法学部, 助教授 (10194557)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1999年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 民事と刑事 / 交渉 / 違法と責任 / 答責性 / 刑事違法 / 自己答責性 / 過失相殺 |
研究概要 |
民事責任は損害分配を志向して客観的基準に従うが、刑事責任は行為者非難を志向して主観的基準に従う……かつて有力だったこの命題を今日なお維持しうるかは疑わしい。民事の答責が、医療過誤や公害・薬害で無過失責任に接近したり、交通事故で(行政)交通規則に応じた画一処理の傾向を示すのは,医家・企業・国家という一方当事者の専門性に応じた特殊化(特権規制)や、道路交通という秩序枠に応じた特殊化(調整的規則)に由来する。各々の交渉の特性に見合った個別化、相手方にそれと信頼させる交渉をしたことこそが決定的であり、「交渉」の類型的把握という意味での客観化なら、普偏化を属性とする法一般の特徴である。刑法でも、心理状態の存否を問う主観的把握はもはや少数で、責任じたいは規範的に「客観化」されている。経済活動の拡大を背景にした動的安全のための「客観化」は時代的制約の中での論理でしかない。少なくとも民刑分化の原型では、私的自治=契約自由=意思主義から主観的事情に意味を見出すのが民法であり、国家刑罰権の発動を促す公的利害に着目する刑法で主観的事情の比重は低くてよいはずである。不法行為は契約と違うにせよ、当事者を見る民事責任が、より広く社会を考える刑事責任よりも「客観化」されるとは思えない。刑事答責の主観化傾向は、結果責任からの離脱を基礎づけた理性が「意思主義」を暗示した・違法論の客観化の裏面として責任論の主観化が強調された「時代」の現象と捉えられる。答責は要件たる責任の属性とは区別して分析すべきである。むしろ、民事答責の(個々の交渉過程への依存という)主観性・刑事答責の(公的諸原理への依存という)客観性を出発点として、交渉ルール担保の必要性を確認すべき刑事違法論であればこそ、当事者「交渉」関係(個別性)を直視しつつ社会規範レベルで・現実の損害(個別性)を直視しつつ社会的応報感情レベルでの「客観的」把握を追及すべきであろう。
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