本研究は、議院内閣制を共通の制度的基盤とする日英両国の立法過程を比較し、日本の立法過程の制度改革を検討したものである。本年度は、咋年度のデータ集計を基にしたデータベースを活用し、その分析を行った。まず、日本と英国の議員立法の量的・質的な相違と、その手続き・運用における英国の一定の審議機能を確保するための制度的工夫の実態を分析した。そして、日本の国会における議員立法が、政党間の党派的対立の要素が強く、党議拘束や機関承認によって、事実上の政党立法になっている点、これに対して、英国では、議員立法がバックベンチャーによる政策アィデアをベースにした政府立法と相互補完関係にある点が対比できた。特に、日本の立法過程において、提案された法案の審議する機能が脆弱な点を、審議する国会に改革するための改革案を提示した(『議員立法と制度改革』1999年度日本公共政策学会) 次に、日本の国会における政党規律の強さが、日本の国会における野党のヴィスコスティを活用した抵抗活動の要因となり、立法審議を形骸化しているのに対し、英国では、1970年代以降のバックベンチャーによる造反投票が、議会における法案審議や行政監視において議会の自律的機能をある程度確保する要因となっている点を比較した。日本においても、1990年代の政権交代以降、その頻度数においては、英国の約2割に対して、数パーセント程度と少ないものの、与野党にまたがる分裂投票が頻繁に生じ、平議員の自律性が増大している現象をデータで示した(『国会における党議拘束と造反投票』1999年日本政治学会)。こうした研究を通じて、日本の国会の立法過程の制度的改革の政策提言を行った。
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