研究概要 |
1990年代後半は銀行の貸し渋り等により、企業の倒産が急増した。企業の資金繰りを助けるため、公的金融機関による中小企業向け貸出の増加や、信用保証協会の特別保証制度の充実がはかられた。研究課題との関連から言えば、このような公的金融の効果を分析すべきであったが、今年度は別の観点から企業の財務危機を取り巻く環境を検討した。それは、倒産法制の整備とうい観点である。特にElazar BerkovitchとRonen Israelによる"Optimal Bankruptcy Laws Across Different Economic Systems"(The Review of Financial Studies,1999)という論文をもとに、これからの日本の望ましい倒産法のあり方について検討した。最近の日本の倒産法改正の流れ、企業を清算するよりも再建する方に重きが置かれている。それは従来、企業の最後の貸し手としての機能を果たしていたメインバンク制度が崩壊しつつある中で、企業を再建させる別の枠組みを作る必要が生じたからだと思われる。しかしこれが経営者によって単なる延命手段として悪用されれば、金融機関の貸出が逆に厳しくなり、かえって企業が自分の首を絞める結果となりかねない。重要なことは、債務免除の代わりに、再建計画の履行を裁判所が厳密にチェックすることで、ルールを遵守させる体制を強化することである。それによって金融機関の財務危機企業への貸出が促進されると思われる。このような研究成果はまだまとまっていないが、近いうちに論文として発表する予定である。
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