研究概要 |
本研究では,情報システムと組織成果,とりわけイノベーションの出現頻度に焦点を当て,情報システムを組織成果に結びつけるためにはいかなる行動が必要になるかを解明した。 分析の結果,仮説1「情報システムの活用は企業のイノベーションを促進する」,仮説3「業界環境は企業のイノベーションに影響を与える」,仮説4「企業規模は企業のイノベーションに影響を与える」,仮説5「経営戦略は地域企業のイノベーションに影響を与える」,仮説6「組織能力は地域企業のイノベーションに影響を与える」の5仮説は概ね指示された。 他方,仮説2「地域の能力は企業のイノベーションを促進する」は重回帰分析では支持されなかった。しかしながら,パス解析の結果は,「地域の能力」という構成概念の1次元である「地域の産業政策の有効性」が,企業と産業界ならびに官・学界との日常的な交流を促進すると同時に,企業の「自社の強み」を強化することによって間接的に企業のイノベーションを促進している実体が明らかにされた。 本研究の第1の意義は,先行研究で検討されてきた関係を,わが国企業を対象に定量的に解明した点である。第2の意義は,変数間の因果関係を詳細に記述するモデルを開発し,組織成果(とりわけイノベーション)の規定因を解明した点にある。これによって,従来,2変数の関係(ネットワークの活用=イノベーション,地域の能力=イノベーション,環境=イノベーション,戦略=イノベーション,組織能力=イノベーション)として分析されてきたイノベーションの全体像を明らかにした。
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