研究概要 |
本年度において得た定理とその意義について述べる. 定理.モジュラー曲線X^+_0(N)=X_0(N)/(w_N)が5以上の種数でかつ3角的(射影直線上の3次被覆)となるのはN=122,146,181,227(種数5),N=164(種数6),N=162(種数7)のときである. 代数体上の楕円曲線がQ-曲線であるとは,自身とそのすべてのGalois共役が同種となるようなもののことをいう.Q-曲線は本研究における主な研究対象のひとつである.モジュラー曲線X_<1N>(N)C支配される楕円曲線はすべてQ-曲線であることが知られているが,この逆も成立するであろうと予想されている.定義から自明にわかるように有理数体上の楕円曲線はQ-曲線であり,この場合上述の予想は有名な谷山-志村予想に他ならない.本研究においては特に2次体上のQ-曲線に興味がある.簡単にわかるように,2次体上のQ-曲線の同種類を決定することはX^+_0(N)の有理点を平方因子をもたないすべての正整数Nについて決定することに帰着される.しかしながらX^+_0(N)の有理点問題は極めて難しく,Nが素数でかつX^+_0(N)の積数が2以上の場合Xr(N)(Q)が決定されている例は現在のところ皆無と思われる.一方,Xo}′(N)(Q)の点を得たとき,それに対応するQ-曲線のj一不変量も求めておくことが必要である.以上のことから,計算機による有理点探索を行いやすく,かつj-不変量も計算しやすいX^+_0(N)のモデルを求めるのは重要なことである.一般にはX^+_0F′(N)の標準射による像がそのようなモデルに相当するが,X^+_0(N)が3角的であるときにはこれが完全交叉でないため困難を伴うことが予想される.したがって,3角的なXr(N)を決定し,その平面モデルで可能な限り性質のよいものを求めておくことは意味がある.求まった平面モデルをここに掲示することは略す.
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