研究概要 |
本研究では,横断的回転数について研究を行った. 3次元多様体の非特異流について,流に接する1次元バンドルを取り,その直交捕バンドルを考える.このバンドルには流の微分から自然に流が誘導される.これを微分流という.そこで,その射影を取ると,射影空間をファイバーとするバンドル上の流が構成される.これを角度流という.この流は軌道に沿ってどのくらい軌道がひねられているかを表しており,これまでいくつかの研究がなされてきた.本研究では,このひねられている率を表す横断的回転数(ルエン不変量)について,エルゴード理論を使った考察を行った. 具体的には,バンドル写像を円周の同相写像の族と考え,円周の同相写像に関する理論で最も有効な手段である不変測度の拡張を試みた.その結果,ブルバキの積分分解定理を用い,ほとんどすべてのファイバーについて,不変確率測度を定義した.この測度は一般には,連続的に変化するものではなく,可測にしか変化しないが,再構築をすることにより,軌道に対しては完全に不変となるものが構成できた.また,サポートが1点か2点か全体になること,また,ある種の連続性があることが示せた. このファイバー不変測度を用いて,横断的回転数を計算したところ,射影空間バンドルの流の不変測度から横断的回転数が直接計算できることが示せた.横断的回転数は定義から,時間平均を更に場所平均せねばならないため,実際の計算はとても困難なものと思われたが,この結果により,場所平均だけで計算できることが示された.また,この応用として,横断的回転数が1階微分可能性について連続に変化することが示された(連続変形に関して連続にならないことは,既にジスとガンボードにより示されている).この点でも,横断的回転数のファイバー不変測度による計算が有効であることが示された.
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