1次元のランダム媒質の中を動く確率過程について研究を行なった。多くの場合、ランダム媒質の中の確率過程は、媒質がランダムでない場合のものに比べて非常に遅く変動することが知られている。本研究では、1次元の媒質として、正の部分と負の部分に違う確率過程をとり、その中を動く拡散過程の長時間後の漸近挙動について考察することを目的としていたが、特に、負の部分の媒質としてはブラウン運動を、正の部分には媒質はない場合を考え、このようなランダム媒質の中を動く拡散過程(片側ブラウンポテンシャルをもつ拡散過程と呼ぶ)の長時間後の漸近挙動について研究を行なった。その結果、原点から出発する片側ブラウンポテンシャルをもつ拡散過程に対し、ブラウン運動を不変にする尺度変換をほどこし、極限操作を行なうと、その極限は、確率1/2で非負実数上の反射壁ブラウン運動に、あとの確率1/2で恒等的に原点にとどまる過程になるという結果を得た。また、片側ブラウンポテンシャルをもつ拡散過程の最大値過程と最小値過程の長時間後の漸近挙動についても考察を行なった。(田中洋日本女子大教授、河津清山口大教授との共同研究。)これらの解析を行なうにあたっては、媒質の自己相似性の利用が有効であった。 今後は、1次元の媒質として、負の部分と正の部分に指数の異なる2つの狭義安定過程をとり、その中を動く拡散過程の長時間後の漸近挙動について研究することを計画している。さらには、媒質として、負の部分には狭義安定過程を、正の部分には自己相似性のない確率過程をとり、同様の研究を行なうことも計画している。
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