マウイ島に建設中の、マグナム望遠鏡用の広視野カメラの開発を進めてきた。11年度に観測開始予定であったが、望遠鏡がたちあがらなかったため、実際の観測を始めることはできていない。また、重力レンズ解析を行うためには、星の楕円率が数%以下でなければならず、これを実現するためには自動ガイダー機構をカメラ側に持たなければならないことが、研究を進めていく中で分かった。このためこの機能を追加すべく、現在準備を行っている。 これと平行して進めてきた、すばる望遠鏡用の広視野カメラ(Suprime-Cam)が立ちあがり、観測データを得ることができたため、重力レンズの解析はこちらを用いて開始した。立ち上げ時期であったため、質のよいデータはかぞえるほどしかないが、A851という赤方偏移が0.41の銀河団のR-bandのデータは1時間積分で星像サイズが0.42秒角という非常に優れたデータを取得することができた。このデータに重力レンズ解析を行い、銀河団中心にひとつ、そこから約1分角離れたところにもうひとつの重力集中を検出できた。この銀河団の質量構造は静水圧平衡などの単純なモデルでは表せないことが明らかになった。この質量分布はROSAT-HRIが取得したX線強度分布と酷似しており、これは我々のデータ解析の正しさを裏付けている。
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