素粒子の標準理論を超える現実的な理論を発見することは重要な課題です。ポスト標準理論の候補として有望なのは、'超対称性の導入'による超対称性標準模型さらに'力の統一化'をめざす超対称性大統一理論です。さらに、超弦理論やM理論は自然界の究極の理論の有力候補とみなされています。今回の研究の目的は、超対称性大統一理論や超弦理論を出発点にして現実的な統一理論の構造を解明することです。主な成果は以下の通りです。 1.超弦理論が有する一般的な特徴(弦理論特有の相殺機構により無害な異常なU(1)対称性や余分なコンパクトな空間の存在)に関する低エネルギーにおける現象論的な意味合いを調べました。異常なU(1)対称性に関しては、ケーラーポテンシャルが非摂動的な補正を受けた場合でも、U(1)対称性の破れに際してスカラー粒子の質量に対するD-項からの寄与が重要であることがわかりました。また、余分なコンパクトな空間に関しては、コンパクト空間S^1/Z_2を含む5次元で定義された大統一理論の特徴を調べました。 2.ゲージ超場に関する繰り込み可能でない運動項を持った超対称性大統一理論に基づいて、現象論的な考察を行いました。この理論の特徴は、ゲージーノの質量やゲージ結合定数に関して従来のとは異なる関係式が成立することです。この関係式の違いにより、従来のとは異なる性質を持った超対称性標準模型が低エネルギーの有効理論として導かれることがわかりました。
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