研究概要 |
弦理論の双対性の一つとしてAdS空間における超重力理論と、その境界での共形場理論の対応が盛んに研究されている。我々は、3次元の反ドジッター空間と2次元の共形場理論の対応において、新たにN=3超共形対称性を持つ模型の具体的な構成をおこなった。従来は、2次元N=4超共形対称性をもつ理論のみが研究されていたが、オービフォールド型の模型を構成することにより、超対称性が低いN=3型の模型を構成するのに成功した。また、この理論が交差しているM5-braneの配置として実現されていることをSUGRA解の考察から示した。これらの成果は日本物理学会の1999年春の年会において発表され、また学術雑誌Joural of High Energy Physicsに掲載されている。さらに、AdS背景場の変形という立場から、境界での共形場理論の変形について、解析を行なった。5次元超重力理論と、対応する4次元の場の理論の場合には、繰り込み群の流れの解析が以前から提唱されていた。我々は、3次元反ドジッター空間と、2次元の場の理論との対応において、やはり繰り込み群の流れがあると思われるモデルを考察した。我々が構成したモデルは、ALE空間の中にD1-D5ブレインを置いたものであり、共形対称性が(0,4)型にまで破れ、繰り込み群の流れが生じると思われる。我々は、このモデルに関してC関数に類似の関数を提唱し、それが単調減少であることを確かめた。この成果は日本理学会の1999年秋の分科会において発表された。次に、曲がった時空でのD-braneの理解を目指すという立場から、カラビ・ヤウ多様体上での弦理論を、位相的シグマ模型により解析した。従来、閉弦の場合についてのworldsheet instantonによる非摂動効果の解析は様々に行われているが、我々は開弦の場合の非摂動効果を調べるために、typeII型弦理論のcentral chargeを具体的に構成した。Gepner pointでのCFTの結果をシグマ模型のinput dataとして用い、D-braneに対応するboundary stateのcharge,幾何学的な交差形式、モジュライ空間の計量、曲率についての解析を行った。この結果は3篇の論文にまとめられ、学術雑誌Physics Letters B,Nuclear Physics Bに投稿されている。
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