研究概要 |
1,ミューオニウムの超微細構造に関する理論計算 ミューオニウム(正電荷ミューオンと電子の束縛状態)の基底状態における超微細構造へのα(Zα)^3補正項を求めるため、NRQED理論に基づく計算を行なった。ここでαは微細構造定数で、Zは正電荷ミューオンの電荷をZe,Z=1と表したことによる。この項に寄与するさまざまの過程のうち2光子交換過程の相対論的な運動量補正の項を計算した。この項を解析的に求めることに成功し、リーディングの赤外発散が相殺することを示した。残りのネクストリーディングの赤外発散はその他の過程からの寄与と相殺するはずであり、確認のための計算が現在進行中である。 2,6次真空偏極の2通りの評価:厳密式V.S.パデ近似 電子の6次真空偏極の効果は、厳密式として多次元積分で表すことができる。もちろんこの積分を解析的に実行することは困難であり、通常はモンテカルロ数値積分による評価が行われるが、精度の桁落ちの激しい難しい数値計算である。そこで数値計算の信頼度を確認するために、電子の6次真空偏極をパデ近似を用いて表したものを用い、両者を使用した場合の物理量の違いを評価してみた。物理的に最も興味のある対象として、ミューオンの異常磁気能率、および、ミューオン水素原子の2P-2Sラムシフトへの真空偏極の効果を数値的に求めた。結果として、(1)モンテカルロ積分を倍精度で行う場合は、サンプリングの数を十分に増やせば両者の値はいずれの物理量でもよく一致すること、(2)モンテカルロ積分を倍々精度で実行すれば桁落ちの問題はほぼ回避できること、などが判明した。
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