研究概要 |
昨年度において、誘電体板が周期的に並ぶ1次元フォトニック結晶において、誘電体板が周期的に振動するときの電場の支配方程式を導き、誘電体板の誘電率が矩形変化する場合に数値計算により、ある条件の下では誘電体板が3層以上あれば結晶全体を振動させただけで入射した振動数の光が共鳴的に増幅されることを見いだしている。 しかし、このとき用いた格子振動の振動数は現実的ではなかった。今年度においては、より現実的な状況において入射した振動数の光の共鳴的増幅がどうなるかを中心テーマに研究を行った。数値計算において、格子振動の振動数が実験可能な程度に小さくなると、結晶全体を振動させただけでは増幅が見られなくなることが示された。しかし、同時に格子が異なった位相で振動する場合には入射光が増幅されることも示され、この効果が実現可能であることが示された。この結果は日本物理学会第54回秋の分科会、領域5,1合同セッションにおいて「振動するフォトニック結晶における光の増幅」と題して講演した(講演番号:24pYB-9)。また、増幅される理由を探るために、解析的な考察を行った。格子振動の周波数が非常に小さい場合、支配方程式を格子振動の周波数について展開することにより、解析的に以下のことを示した。格子が全て同じ位相で振動するか、隣り合う格子が逆位相で振動する場合には増幅は起こらない。格子振動は実行的に誘電率の虚部をもたらし、それは誘電体の誘電率、格子振動の振幅、振動数、波数に依存するだけでなく、結晶内の場そのものの性質にも依存する。この虚部が負になるような場合、格子振動を伴ったフォトニック結晶はアクティブな媒体となり、光を増幅する。逆に、光を吸収させることも出来る。この結果は日本物理学会2000年春の分科会、領域5,1合同セッションにおいて「フォトニック結晶における格子振動による光増幅」と題して講演される(講演番号:22pN-12)。現在、NATURE誌に投稿準備中。
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