研究概要 |
本研究の目的は以下のように設定した。 1。溶液中で生成されるC_<60>会合体-の構造解明及びサイズ制御。 2。光照射によるC_<60>ナノクラスターからカーボンナノボールへの物質変換のメカニズムを明らかにしたうえで、カーボンナノボールの構造を予測する。 3。上記のC_<60>ナノクラスター及びカーボンナノボールなど空間的に制御された新物質群における、非線形光学特性や発光特性等光機能性を中心に量子サイズ効果を探索する。 このうち、本年度は上記超微粒子における量子サイズ効果に着目した研究を重点的に行った。 「研究成果」 :単一成分有機溶媒(ベンセン・トルエン等)やC_<60>の溶解度が極端に異なる二つの溶液の混合溶媒(例:ベンゼンとエタノールの混合溶媒)において会合体の生成を見い出し、高分解能透過型電子顕微鏡による観察や各種分光法を主たる手段としてその生成メカニズム、サイズ、構造及び発光特性などを調べた。単一成分有機溶媒で生成される会合体と混合溶媒系のそれとは、生成メカニズムはもちろん、特にサイズの面で大きな違いを示す。前者は溶媒の凍結とともに生成されるもので、数ナノメートル領域の特定のサイズ(直系:約4,6,8及び10nm)に集中的に分布している。一方で、混合溶媒系で生成される会合体は、比較的サイズが大きい領域で(数十から数百ナノメートル)、良溶媒と貧溶媒の混合比またはC_<60>の濃度を調整することにより、サイズの制御が可能である。C_<60>会合体のなかでも特に数ナノメートル領域のものでは、光重合反応においてC_<60>固体やより大きなサイズの会合体では見られないメゾスコピック特性が観測された。具体的には、この領域の会合体における光重合反応により生成される物質では、より大きいサイズの会合体における光重合反応生成物からは観測されない、可視域における強い発光が観測された。このようなメゾスコピック特性は、数ナノメートル領域の会合体の構造が、より大きなサイズのfcc構造とは違う正20面体構造であることから起因するものとして考えられる。
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