研究概要 |
物質に電場を印加した時、電場の高次項に対する応答(電束密度)と電場との比例係数を非線型誘電率という。本研究の目的は、非線型誘電率の測定装置を開発し、本研究で開発した装置を構造相転移研究のプローブとして応用することである。本研究では、リラクサ強誘電体および強誘電性液晶における電場の3次の応答である3次の非線型誘電感受率ε_3(ω,ω,ω)の測定を周波数領域500Hzから5kHzで行った。リラクサ試料には、Pb(Mg_<1/2>W_<1/2>)O_3-PbTiO_3混晶セラミックおよびPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3単結晶を用い、強誘電性液晶の研究ではMHPOBCを用いた。 実験の結果、リラクサでは誘電的な非線型性が通常の強誘電体に比べて非常に強いこと、500Hzから5kHzの周波数領域に分散が存在すること等が確認された。また、リラクサ強誘電体の特徴的な誘電的性質は結晶中に形成されている極性クラスターの熱揺動によることが指摘され、幾つかのモデルが提案されている。本実験によって、このクラスタの運動に関し、熱揺動だけでなくクラスタ間の相互作用が重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究においてリラクサPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3単結晶試料の育成にも成功している。 一方、強誘電性液晶MHPOBCでは、SmA-SmCα^*相転移点近傍における測定によって、この相転移は2次転移であり、少なくともSmCa^*相は強誘電相でないことを明らかにした。 本研究により、非線型誘電率の測定が構造相転移研究の強力な手段となり得ることが示された。
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