研究概要 |
本年度は,正孔ドープされたスピン梯子Sr(Ca)14-24-41銅酸化物系について,単結晶を用いて物性の詳細な測定を行った。この物質は超伝導が,Ca置換された組成で,さらに超高圧下で発現していることを艦みて,広い組成範囲において,超高圧下に至るまで測定を行い,この系の電子状態,特に,Ca置換と圧力印可がこの系にどういう役割を持つのか,超高圧下での超伝導がどういう機構で発現しているのかを解明しようと試みた。その結果,電気抵抗率の異方性は,Ca置換では増大,圧力印可では減少と,互いに反対の効果を与えていることがわかった。すなわち,Ca置換は,梯子のホール濃度を増大させ,梯子が十分なホール量に達すると,ホールは対を形成し,キャリアは1次元的に閉じこめられる。これに対し,圧力印加は,系の次元性を増大させる効果が主であるということを示唆している。このことから,この物質の超伝導発現機構に対し,ドープ量増大によって対相関が強められたホールが,圧力印可による次元性増大により2次元的に動き出すためであるという描像が得られた。この結果は,現在,論文に執筆中である。 さらに,今年度はスピン鎖Sr213銅酸化物をスピンを持たないPdイオンで切った場合の応答を帯磁率,μSRなどの磁気的手法で研究した。その結果,僅か1%のPdドープでネール温度が半分になることが分かり,この物質の一次元の良さを支持した結果が得られた。また,ドープによって,秩序化したスピンの長さは大きな空間分布を持ち,少なくとも定性的に1次元量子スピン系に期待されている,大きな不純物効果を検証することが出来た。この結果は,現在,論文に執筆中である。
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