研究概要 |
スピン・パイエルス(SP)系の光散乱、光反射から、磁性不純物置換効果と磁場効果を研究した。 SP相のラマンスペクトルには格子が倍周期化による折り返しモードや、SPギャップを反映した磁気ラマン・スペクトルが観測される。不純物置換系ではSPギャップモードが観測される。 我々はNi置換試料のSP相での折り返しモードと磁気ラマン・スペクトルの詳細な温度依存性を測定し、LT22(8月Helsinki工科大)と日本物理学会(9月岩手大学)で報告した。SP相の零磁場での測定においてはNi置換系でもZn、Mg、Siなどの非磁性不純物置換系と同様な折り返しモードの強度の減少や、SP長距離秩序が不純物置換に伴いSP短距離秩序になることが明らかになった。SPギャップはNi置換系では小さくなるが、絶対零度でのSPギャップの大きさ△_0と相転移温度T_<sp>の間にはhΔ_0/k_BT_<SP>=1.61の関係があるごとが明らかになった。また、9.5Tまでの磁場下でのラマン散乱測定を行い、結果を日本物理学会で報告した。(3月関西大学)磁場下ではNi^<2+>イオンの周囲の局所的な磁化の様子が変化するため、SPギャップ・モードの強度が小さくなる。低温でSP長距離秩序が観測されるNi置換試料では、室温で幅広いルミネッセンス・スペクトルが観測される。このスペクトルのカット・オフエネルギー(14,000cm^<-1>)はCuのd-d遷移に対応するエネルギーである。 Mn置換系は1%程度の置換でSP相が抑制されるのが特徴である。この試料は結晶の色が変化しているので、電子系の変化が期待される。可視光領域の吸収スペクトルには20,000cm^<-1>付近に新たな吸収帯が観測された。Mn置換系のラマン散乱、光吸収の測定から、フォノン系に大きな変化が無いこと、0.81%Mn置換試料でSP転移が起きていることが確認された。この結果は日本物理学会(3月関西大学)で報告された。
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