研究概要 |
本研究の目的は大きく分けて二つある。一つは、永久磁石を用いた高性能・小型の電子衝撃型多価イオン源を開発すること、もう一つは、その多価イオン源を用いた多価イオン-分子衝突実験において、価数を変化させることにより反応熱を制御し、分子の解離機構を調べることである。 小型多価イオン源は、軸方向に着磁された二つのリング状永久磁石(NdFeB)を用いて開発した。永久磁石を用いることで、ソレノイドコイルや超電導ヘルムホルツコイルを用いた従来のイオン源に比べ大幅な小型化が実現され、持ち運びすら可能となった。この小型多価イオン源の開発はほぼ完了し、95%以上の電子ビーム透過率(20mA)、Ne^<10+>,Ar^<17+>,Kr^<29+>の検出、を達成した。この結果は原子衝突物理学国際会議(1999年7月)、イオン源国際会議(1999年9月)、日本物理学会(1999年9月)で発表し、論文発表も行った。一方、解離イオンの質量と速度ベクトルを、従来の飛行時間差法(TOF法)二次元位置検出を組み合わせた三次元画像分光装置によって求めることで、解離の機構を調べる。電荷交換後の入射イオン価数を選別し、これにコインシデンスした測定を行うので、特定の反応のみを選び出すことができる。この装置の一号機が2000年2月に完成し、予備的データをAr^<7+>+N_2,Ar^<7+>+He系で取ることができた。コンピューターへのデータの取りこみに関して問題が残っており,まだ画像分光には至っていないが、一次元のTOFスペクトルは得られた。
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