研究概要 |
四国沖のDSDP site 296(29゚20.4'N,133゚31.5'E.,2,920m)で掘削された海底コア(長さ:180m)は、比較的その回収率が良く、石灰質の半遠洋性堆積物で生層序学的年代も比較的詳しく明らかにされている。本研究では、このコアについて、有孔虫殻の酸素同位体比層序の確立とミランコビッチ年代への変換、浮遊性有孔虫群集の変換関数による古水温・古塩分の算出、さらには底生・浮遊性有孔虫殻の炭素同位体比による海洋生物生産性の変遷を、約1万年間隔という分解能で解析し、北西太平洋における過去500万年間の気候変化に伴う海洋環境変遷を復元することを目的としている。申請者は、これまでに約50層(約10万年間隔)について古水温を算出しているので、平成10年度は、その間隔を細かくするように240サンプルについて次の解析を行っている。 1. 浮遊性有孔虫(Globigerinoides ruber)の殻の酸素・炭素同位体比を同位体比質量分析計(Finnigan MAT 251)で測定した。その結果、酸素・炭素同位体比共にこれまで以上に大きな変動が見られ、過去の気候変化に対応した変化が明らかになるつつある。浮遊性有孔虫の化石種については、その酸素・炭素同位体比を現生種と比較して生息環境の推定も行っている。 2. 浮遊性有孔虫の群集解析と変換関数による古水温・古塩分を算出するために、1サンプルにつき無作為に200個体の浮遊性有孔虫群集の拾い出しを行っている。 3. 底生有孔虫と浮遊性有孔虫の炭素同位体比の差および底生有孔虫でも海底表面に生息している種(Epifauna)と泥の中に生息している種(Infauna)の炭素同位体比の差から、過去の海洋表層の生物生産性の強弱を推定するために、これらの有孔虫の拾い出しを行っている。
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