研究概要 |
水槽実験 貝殻の堆積過程を明らかにするために,茨城県霞ヶ浦周辺地域に分布する上部更新統下総層群木下層から採取した海進ラグ堆積物を構成している貝殻化石(Glycymeris,Asonomarocardia,Protothaca,Tresus,Mactra,Mercenaria,Gomphina,Donax)を使用して,2次元造波水槽で堆積実験を行った.村越・上村(1997)が求めたラグ堆積物形成波浪条件を参考に,周期1〜2秒,波高4〜8cmの波を発生させた2次元造波水槽に貝殻化石を投入して埋積過程を観察したところ,埋没姿勢に関して,(1)貝殻の長径は流れに対して70%が直交する(2)波の進行方向に対してわずかに(2〜3゜)インブリケートする,という特徴がみられた. X線CT画像の解析とファブリック CT画像から3次元画像を作成し,貝殻化石のファブリックを計測した.Allen(1988)や水槽実験で得られた結果を加えて解析した.外洋環境でのラグ堆積物を構成している化石貝殻層は4層認められ,それらのファブリックのデータからは下位から,潮汐流→2種類の振動流→潮汐流+上げ潮流→潮汐流+沿岸流,と変化したことがわかった.貝殻層の形成に伴って若干深海化したことが示唆される.湾側環境のラグ堆積物からは,潮汐流+下げ潮流の影響がみられた.これらの結果から,貝殻化石のファブリックはラグ堆積物が形成された海進時の堆積環境の営力の変遷をよく反映していると考えられる. シークェンスとの対応 海進に伴って形成されるラグ堆積物中の貝殻のファブリックは,バリア島の外洋側と湾側とでは流れの違いを反映して異なる.とくに外洋側で営力に違いがみられ,それは海面上昇に伴って堆積環境が変化するというシークェンスの枠組みに整合的であった.
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