研究概要 |
カンラン石玄武岩は一見単純な岩石である。斑晶(大きな結晶)としてカンラン石しか含んでいない.しかし,南西インド洋海嶺の玄武岩はドレッジされたもので当然その産状は不明である.よって日本のような島弧の同じような岩石(鳥取県大山のカンラン石玄武岩)を徹底的に調査し,南西インド洋海嶺のカンラン石玄武岩と比較するするという戦略をとった.その結果二つの成果が挙げられた.1. 大山のカンラン石玄武岩溶岩は全岩組成ではどれも似通っている.しかし,カンラン石斑晶の形態,組成,マグマとカンラン石の平衡関係を調べると,溶岩は二種類に分けられることが判明した.ひとつはマグマとカンラン石が平衡を保ちながら分化したもので,その溶岩からマントル共存した初生マグマの組成を正確に求めることができる.もう一種の溶岩はマグマとカンラン石が非平衡な(カンラン石が鉄に富んでいる)ものであり,そのような溶岩中のカンラン石は特徴的な骸晶状を呈する.このマグマは地下において過冷却を経験したものであると結論された.この成果はJoumal of Petrologyに掲載された.2. 大山火山のカンラン石玄武岩において二種の溶岩流が識別されたことから同じ手法を南西インド洋海嶺に適用した.その結果,全く予想外の事実が判明した.南西インド洋海嶺の210kmにおよぶ海域からドレッジされたカンラン石玄武岩および斑晶のカンラン石は非常に均質な組成を持つ.特に驚くべきことはカンラン石の組成の一様性である.大山では一つの溶岩でもMg値が10程度変化するのに対してこの海域のカンラン石は全部合わせても2から3程度である.また,Mg値に関してマグマとカンラン石は平衡であるが,Ni量に関しては系統的に非平衡(カンラン石のNiOが低い)ことが判明した.これらのことから南西インド洋海嶺のカンラン石はマグマから晶出したものではなくゼノクリスト(捕獲結晶)であると結論された.この成果は投稿準備中である.
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