研究概要 |
本申請研究は,海底堆積物の同一層準から産出する花粉(大気由来)と浮遊性有孔虫(海洋由来)を取り出し,それぞれ加速器質量分析法(AMS法)による14C濃度測定を行い,過去にさかのぼって,大気-海洋間の14Cリザーバー効果の経年変化を見積もることを目的としている。 申請者は,これまで,堆積物から浮遊性有孔虫を集め,微量(5-10mg)でも可能なAMS14C年代測定のための試料調整法はすでに確立してきた。初年度は,海底堆積物に含まれる花粉だけを抽出する手法の確立を中心に行って来た。特に,最終抽出物を電子顕微鏡による観察を行った結果,花粉だけ抽出されている試料と同時に炭化物も含まれる試料が多く認められた。炭化物は,14C年代測定に多大な影響を及ぼすためその完全な除去を行う必要がある。ただし,科学的・物理的に分離が難しいため,2年目は,炭化物の除去法の確率を中心に行って来た。最終的には抽出した試料を,ガラスフィルター上で濾過し,黒色の炭化物をハンドピッキングで取り出す手法を用いたが,多大な労力と時間を要するため,今後も,より効率の良い分離法を確立する必要がある。年代測定用の試料としては,花粉含有量が多いと思われる網走湖と噴火湾で採取された堆積物表層の試料を主に扱い,現在,AMSによる年代測定を依頼中である。その結果が出次第,論文投稿予定である。
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