研究概要 |
平成11年度には以下の研究成果を得た。 1.クラスター負イオンの衝突反応装置の製作 オクタポールイオンガイド付きの反応室および反応生成物質量分析部の設計を行い,現存の装置に取付けを行った.現在,分子クラスター負イオンの衝突誘起解離の実験を行い,装置の性能評価および最適化を進めている. 2.[(CO_2)_nROHROH]^-の電子構造・幾何構造 (CO_2)_n^-に対してH_2OやCH_3OHなどの極性分子が付加した2成分クラスターの電子構造・幾何構造を光電子分光法およびab initio計算によって調べた.その結果,CO_2^-およびC_2O_4^-の2種類のイオンコアが存在し,極性分子はこれらに対して水素結合を介して溶媒和していることがわかった.また,ある組成の混合クラスターでは2種類の電子構造異性体の共存が観測された.ホールバーニング分光法を光電子分光と併用し異性体の共存機構を明らかにし,クラスター内での電子構造異性化過程のモデルを提示した. 3.アクリロニトリルに対する(CO_2)_n^-の求核付加反応 アクリロニトリル(AN)と(CO_2)_n^-との反応で生成した[(AN)CO_2]^-の電子構造・幾何構造を光電子分光法と分子軌道計算によって調べた.その結果、ANのαおよびβ炭素に対して,CO_2^-が求核的に付加した2種類の分子負イオンが生成することがわかった.このことは,(CO_2)_n^-が有効な求核試剤として働き,カルボキシル化した生成物を与えることを示している.
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