原核緑藻Prochloronからショ糖密度勾配浮上遠心により、チラコイド膜を調製した。このチラコイド膜のポリペプチド組成を改良型電気泳動法により調べた。光化学系IIの構成成分に関しては、すでに大部の報告が見られるが、N末端アミノ酸配列解析により、これまでに報告のないポリペプチドが明らかとなった。それらの中には、他の光合成生物の光化学系Iの構成成分と相同なものが5種類あり、光化学系I反応中心タンパク質PsaBも含まれていた。これにより、Prochloronが酸素発生型光合成生物と相同な光化学電子伝達系を構成していることが確認され、高等植物型光合成の光捕集系の進化を考える上でのモデルとする事ができる。量的にもっとも多いのは、分子量約38kDaのポリペプチドであった。これは、鉄制限環境下で発現する事がラン色細菌にて最初に報告され、光化学系IIのCP43と相同性が高いクロロフィルタンパク質であるIsiAであることが明らかとなった。一方、このチラコイド膜をオクチルグルコシド、ドデシルマルトシド、LDSの3種の混合界面活性剤で穏やかに処理し、非変性的に電気泳動を行ったところ、8種類のクロロフィル結合タンパク質複合体を分離することができた。これらのうち、5種の複合体では蛍光発光が顕著であり、これらが光捕集系タンパク質複合体であることが示唆された。これらの複合体を変性条件下で電気泳動して構成成分を分析したところ、もっとも蛍光を発していた複合体は、先のIsiAとさらにひとつの未知のタンパク質のみから成ることが見いだされた。そのほかの複合体は、これらふたつのポリペプチド以外に光化学系IIの構成ポリペプチドが結合していた。これらふたつのポリペプチドが光捕集系の最小単位であると考えられ、現在、この未知のタンパク質をProchlorothrixにてクローニングを試み、その機能解析に取り組んでいる。
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