研究概要 |
本年度は,積層交叉ARROW型ADD/DROPフィルタの最上部クラッドに,空気中で紫外線を照射することによって屈折率が変化するフォトブリーチ性ポリシランを用いることによって,導波路の等価屈折率を制御してフィルタ中心波長のトリミングを行った. ポリシラン(MeSi)_n[Me(EtO)Si]_m(n/m:混合比)の屈折率変化は光酸化反応に起因し,紫外線照射による分子量や膜厚の変化がないのが特徴である.素子の設計に先駆けて,使用するポリシランの紫外線照射による屈折率変化を測定し,1.448から1.427まで0.021の範囲で照射時間によって制御できることを確認した. 次に最上部クラッドの屈折率変化に伴うフィルタ中心波長の変化を,有限差分法とモード結合理論を用いて数値解析を行った.最上部クラッドの屈折率が1.448から1.427まで変化したとき,フィルタ中心波長は1586nmから1550nmまで36nmの範囲で制御できる見通しが得られた. 実際に素子を製作し,フィルタ応答スペクトルの測定を行った.波長範囲1.50μm〜1.58μmの可変波長レーザを光源に使用し,光スペクトルアナライザで測定を行った.紫外線照射装置を用いて強度56mW/cm^2の紫外線を10秒から210秒間隔で照射し,それぞれのスペクトルを測定した.紫外線を照射する前のフィルタ中心波長は1567.48nm,半値全幅は3.92nmであった.また上下導波路を0.12゚の交叉構造にすることによって,サイドローブを-23dB以下に抑圧できた.最初の10秒間の紫外線照射で中心波長は約5nmシフトし,その後は照射時間に対するシフト量が減少して,最終的に510秒間紫外線を照射することによって1508.76nmまで中心波長が変化し,この結果,約59nmの範囲でトリミングが可能であることを実証した.
|