研究概要 |
周辺円形固定支持され,構造物内の流体(水)で支えられた薄板(アルミニウム合金A2017-T3,板厚1mm)に,鋼球(直径6mm,8mm,10mm,12mm)が,衝突する場合の貫入・貫通挙動を実験により調べた. その結果,本研究で行なった飛しょう体速度が貫通限界速度前後(70m/s〜250m/s)の速度領域において,水の有無により薄板の貫入・貫通現象にさまざまな違いがみられた.まず,試験片の変形は,水の無い場合より水の有る場合の方が,全体的に抑制され,衝撃点付近のみの局所的となり,衝撃点付近の変形量が約10〜20%程度小さくなることがわかった. また生成されるプラグの直径および重量は,水の無いに比べ,水の有る場合の方が大きくなった.例えば,飛しょう体直径が8mmのとき,水の有無によるプラグ直径の差は水の有る場合が水の無いに対し約20%,プラグ重量は約45%であった. しかし,実験では,水の有無により,き裂発生衝撃速度および貫通限界速度にはほとんど差がみられず,昨年度行った衝撃解析コード(AUTODYN-2D)による数値解析結果や他の報告(Ma et.al,1985年など)と異なる結果となった.そこで,水中の応力波の挙動を実験で調べたところ,衝撃直後に,最大圧力約0.85MPaの波形が測定され,この結果は,昨年度の数値解析結果とほぼ同じであり,飛しょう体の運動エネルギの一部が流体の波動エネルギに変換されていることが確かめられた. 以上のように,水の有無により貫入・貫通メカニズムは異なり,その原因として,プラグ生成時に試験片の引張とせん断の割合が異なると考えた.つまり水の有る場合は,水の無い場合よりせん断の占める割合が大きくなっていると予想した.このことは,試験後の試験片のき裂形状の違いからも裏付けられる.
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