研究概要 |
本年度は大きくは,(a)転位ゲージ場理論に基づく第一原理Hamiltonianの導出と有効理論の評価,(b)弾性変形を考慮したGinzburg-Landau方程式に基づくセル組織形成シミュレーション,および(c)結晶塑性理論に基づくFCCおよびBCC金属の微視的構成モデルの構築の3点に関して検討を行った.(a)では,転位のゲージ場理論の枠組みにおいて,弾性場と転位場および両者の相互作用場を含む転位論的第一原理Hamiltonianを厳密に導出し,立方異方性の場合に対する具体形を求めた.さらに,虚時間形式のFyenmann経路積分により分配関数を評価し,弾性場の体積変化部分と転位場に関する有効Hamiltonianを導出した.これからGinzburg-Landauの自由エネルギ汎関数を求め,さらに保存系・非保存系に対するGinzburg-Landau(GL)方程式を導いた.(b)では,2相合金の相分離に対して適用されている方程式と,(a)で得たGL方程式との類似性に着目し,セル形成過程メカニズムについて考察を加えた.同モデルに基づき2次元パターン形成のシミュレーションを実施し,セル壁-セル内部間の弾性ミスフィットひずみや弾性異方性がセル組織形成に及ぼす影響について調べた.(c)では,セルなどの転位下部組織の自発的形成を考慮した硬化発展モデルを提案し,結晶塑性理論の枠内で種々の負荷条件に対する計算を行った.とくに温度の効果および回復過程のモデル化を新たに行った.また,BCC金属に対しても適用できるようモデルの拡張を図った. 以上の研究成果に加え,昨年度に引き続き研究代表者は場の理論や高次結晶塑性理論に関する各種ワークショップやオーガナイズドセッションを企画・実施し,関連分野の研究者との連携を密に図っている.また,1999年6月には米国機械学会(ASME)のAnnual Meetingにおいて「勾配塑性論とその応用に関するシンポジウム」をオーガナイズした.同シンポジウムには当該分野の一線の研究者が参集,活発な議論が展開された.さらに2000年8月にはLos Angelesで開催されるICES'2Kにおいて,「塑性におけるマルチスケールモデリングとシミュレーション」に関するシンポジウムの開催を予定している.
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