研究概要 |
本研究では,平面的に形成された微細構造物を,自己の内部応力を利用して変形させ,その形状を保持する方法(自己成形)を確立することを目的としている.使用材料として,Zr基の金属ガラス(過冷却液体域を有するアモルファス合金)をスパッタリング法により薄膜化して使用した.金属ガラスは,常温においては高強度,高弾性限界,高耐食性などのアモルファス合金としての特性を有する.さらに,過冷却液体域と呼ばれる一定の温度範囲において水飴状に軟化する.この性質を利用することで,平面的に形成された微細構造物を自己成形させることが可能と考えた. 前年度までの検討によりリフトオフ法により,長さ100〜800μm,幅25〜50μm,厚さ2μmの微細片持ち梁を製作した.この微細片持ち梁を用いて,金属ガラスを過冷却液体域への加熱することによって軟化させ,梁の自重による自己成形を試みた.検討の結果,微細片持ち梁を過冷却液体域まで加熱することで変形させる事に成功した. 今年度は,この自己成形の応用として直径800μm,梁の幅50μm,厚さ約3μmの円錐ばね形状を自重による自己成形および治具を用いた成形法により製作し,これを基板上に四分割した基板電極によってステップ状に駆動する基板面外駆動静電マイクロアクチュエータを試作した.自重を用いた自己成形法においては高さ40μmの円錐ばねが,治具を用いたものでは高さ約400μmの円錐ばねがそれぞれ製作することができた.また,自重による自己成形法にて製作した円錐ばねは,基板電極との静電力により17Vの駆動電圧で4段階のステップ駆動に成功した. 本研究の成果として2件の国内学術講演会発表と1件の国際学会での発表を行った.また国内学術雑誌への論文を2件投稿し掲載された.
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