研究概要 |
環境保全問題が高まる中にあって,本研究は硬脆材料の精密切断技術である外周刃方式において必要不可欠である加工液の使用量を飛躍的に低減化できる技術の確立を目的としたものである.そして,その具体的方策として,外周刃方式への加工液供給をエアミスト化とし,さらには加工中の工作物側に鉛直方向への振動を付与することによって加工機構のマクロ的な断続化を図ることにした.平成11年度においては,前年度に行った基礎的な検討結果を背景におきながら,エアミスト加工液による振動外周刃方式を実用性に立脚して多面的に検討した.以下,本年度に明らかになった事柄を記す. (1)振動外周刃方式は加工中の外周刃ブレードと工作物相互間に分離と接触を繰り返すマクロ的な断続切断を実現し得ることを理論的に導出した.さらには,高速度カメラによって分離・接触現象を確認するとともに,分離過程において加工部へのエアミスト加工液の流入排出は促進できることが明らかとなり,このことが加工液使用量の低減への一翼を担うものと判断できる. (2)エアミスト加工液を用いても振動切断方式を行うことで切断抵抗は減じられ,このことは切断抵抗が包含する成分のうち,砥粒と工作物間の摩擦に起因した接触抵抗の低減に起因する. (3)エアミスト加工液による振動切断方式は慣用方式に比較して加工液使用量の飛躍的な低減を可能にするのみならず,加工精度の向上も図ることができる. (4)さらなる環境保全への対応を目的として,イオン交換水をエアミスト用の微量加工液として用い,その適応性を検討したが,振動切断を行えばイオン交換水の使用可能性を示唆し得た. 以上の知見から,本研究による一連の成果は外周刃方式における加工液使用量の低減化を可能にするのみならず,切断加工の高性能化を図ることができる加工技術として位置付けることができる.
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