研究概要 |
スラスト玉軸受は遠心力方向に軌道面を持たないため,玉自身の遠心力が玉運動に与える影響が大きいことが予想される.また,玉の公転に伴うスピン運動は,スラスト玉軸受特有の運動であり,実際の運動の解明が強く望まれている.本研究では,スラスト玉軸受の玉の運動に関し,理論における仮定の妥当性を確認するために,実際の玉の運動を実験的に明らかにしていく.本年度は,様々な運転条件下に於ける玉軸受の玉の実際の運動を記録し,運動の様相を明らかにした.概要および成果は次の通りである. 1.スラスト玉軸受の玉を1個磁化して試験軸受内部に組み込み,磁化玉の中心を原点とした直交3軸方向に磁気センサーの一種であるホール素子を配置した. 2.試験軸受を,駆動軸回転数101rpm,スラスト荷重110N,126N,149N,167N,412N,1032Nの6条件で運転し,得られた測定データ(ホール出力)を基に玉運動をコンピューターを用いて視覚化した. 3.測定データから磁化玉の磁軸の方向の推移を明らかにした.その結果,スラスト荷重が149N以上の条件で磁軸が安定することが知られた. 4.玉運動を定量的に明らかにするために玉自転角速度を計算で求めたが,従来の計算法では精度が十分でないことが明らかになった.そこで,幾何学的思考に基づく新たな計算法を提案した.試行計算によれば,従来の方法より計算精度が上がったことが確認された.この方法は,今後まとめて学会発表する予定である. 今後も継続して研究をすすめ,実験的に求めたスラスト玉軸受の玉の運動を基に,先行して行なわれてきた理論における仮定の妥当性を検証することにしている.
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