研究概要 |
反発硬さに及ぼす皮膜の付着強度の影響を、付着強度の異なる2種類のニッケルめっき材を用いた実験・解析を通して検討した。使用した試験機は、市販の指示型(D型)ショア硬さ試験機である。ただし、ハンマの形状を変えることにより落下高さを減少させ、レーザドップラー振動計のレーザをハンマ上端部に当てることによりハンマの反発挙動を測定した。試験片には,電解研磨によって加工硬化層を取り除いたマルエージング鋼(HV≒700)の表面に,ニッケル(HV≒160)を厚さ20〜100μm電析させたものを用いた。なお,付着強度の影響を調べるために、電析面に前処理を行って付着強度を増加させた試験片と前処理を施さない試験片を作成した。さらに、昨年度開発した有限要素法による被膜材の反発硬度解析プログラムにおいて、皮膜・基材界面に強度の弱い中間層を挿入することにより、はく離現象のモデル化を行った。得られた結論をまとめると以下のようになる。 1.はく離が生じると主に皮膜の塑性変形が増大し、それにハンマのエネルギが消費され反発硬さは低下する. 2.皮膜厚さが増加すれば反発硬さに及ぼすはく離の影響は減少するが,皮膜が薄い場合の付着強度の影響の程度は、圧子と試験片表面間の摩擦の大きさによって大きく異なる可能性がある。すなわち、摩擦が小さい場合には、皮膜厚さが減少するにしたがいはく離の影響は増加するが、摩擦が大きい場合には、皮膜厚さがかなり小さくなると摩擦のために皮膜の変形が拘束され、付着強度の影響は減少する。すなわち、圧子と試験片表面間の摩擦が大きい場合には、付着強度の影響を最も強く受ける皮膜厚さが存在する。 得られた成果を基礎にしてさらに研究を進めれば、反発硬度試験を利用した皮膜の付着強度評価法の確立が可能になると期待できる。
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