研究概要 |
ダクトの壁面に細いスリット(ダクト軸方向長さが極めて短い断面膨張空洞)を設けると,ダクト内を伝搬する音波の振幅を特定の共鳴周波数において減少させることができる。本年度は,スリットの実機適用可能性を探ることを目的として実験を行い,以下の結果を得た。 1 従来検討していなかった大径ダクトヘの適用を考え,実験用風洞の吸込口(直径710mm)に,幅10mmで深さ100mm及び200mmのスリットを並置した。その結果,翼列干渉で生じる卓越騒音成分のうちの2つの成分が同時に消音できることが分かった(約15dBの効果)。スリット部分がかなり大径になるものの,軸方向には寸法を要しない形状であり,吸込口への設置は容易であった。よって,強い卓越成分を生じる大径ダクトの消音にも,スリットが有効に適用できる可能性を示し得た。 2 スリットに起因する流体音について定量的に調べた。ダクト端に幅数mmのスリットを設けた場合,ダクト内平均流速が20m/sを越えると,卓越音が発生した。卓越音の周波数はスリット深さにほぼ反比例しており,スリット部での共鳴音が強く生じると考えられる。ただし,卓越音が発生する流速範囲は限られており,流速に応じて励起可能な周波数範囲が制限されると推察できる。この卓越音は,スリット出入口部形状をエッジ状からベルマウス状にすることにより低減できたが,完全に消し去ることはできなかった。よって,高速気流を伴うダクトにスリットを適用する場合,消音対象周波数とダクト内流速との関係に注意が必要である。
|