研究概要 |
本研究は,メタン・空気予混合ふく射制御火炎(過濃火炎)を対象として,気体分子しか存在しない発熱反応帯とすす粒子が存在する輝炎の間に存在する非発光領域に焦点を絞り,すす粒子の生成過程を明らかにするものである.平成10年度はすす粒子の生成に関与していると考えられるイオンに注目し,静電探針(ダブルプローブ)法により火炎内でのイオン濃度・イオン飽和電流の測定を行った.平成11年度は,すす粒子の前駆物質と考えられている多環芳香族炭化水素に注目し,FIDを用いて濃度測定を行った.その結果,以下の実験結果が得られた. (1)希薄火炎では,最高火炎温度とほぼ等しい位置でイオン濃度は最大となる. (2)輝炎を含む過濃火炎では,最高火炎温度の下流側においてイオン濃度は再度増加する. (3)燃料の酸化領域において,ベンゼンは生成・増加し,最高火炎温度の下流側でほぼ一定となる. (4)フェニルアセチレン,ナフタレン等はベンゼンより遅れて生成・増加し,ベンゼンの濃度が一定となる領域で最大となり,急激に減少する.また,フェニルアセチレンとナフタレンの濃度分布は定性的に同じである. (5)フェニルアセチレンはスチレンよりも遅れて生成する. 以上の結果,火炎内のイオンは多環芳香族炭化水素の成長に関与すること,さらに,アセチレン・酸素火炎と同様に本燃焼においても,ベンゼンからフェニルアセチレンを経てナフタレンの経路やベンゼンからスチレンを経てフェニルアセチレンへと成長する経路があるものと考えられる.また,今回の実験より流速により濃度分布の明白な違いはなかった.
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