研究概要 |
平成10年度の研究成果では,研究対象である蛇行閉ループ熱輸送管(以下MCL-HTD)の(1)数値シミュレーションモデルの構築,(2)気泡伝播による熱輸送現象の発見と気泡伝播型の基本単位である片側2ターンの熱輸送能力の測定をおこなった. 平成11年度は,基本単位である片側2ターンのMCL-HTDの管径や作動流体をかえて熱輸送能力を検証した.即ち,熱輸送管の全熱抵抗を管外熱抵抗,管壁熱抵抗,管内壁-作動液熱抵抗,管内作動液熱抵抗等にわけ,それぞれの値をエタノール,フロン,エチルアルコールを作動流体として温度差と作動液の封入率をかえて測定した.さらに,熱輸送量を管径をかえて測定し,管径の影響を調べた.その結果,本熱輸送管の熱抵抗は,作動している場合には管内作動液に依る部分は非常に小さく,主として管内壁-作動液熱抵抗と管壁熱抵抗が熱輸送能力を律していることがわかった.また,同じ温度差と封入率における管内壁-作動液熱抵抗は,作動流体により異なることがわかった(今回の場合は,フロンの抵抗が最も大きかった).管径の熱輸送能力に対する影響については,(1)ラプラス長さの1.84倍以上の管径でも作動し,輸送熱量は変わらない.従って,管径が細い方が熱輸送能力は高いと思われる。しかし,管径がラプラス長さ以下になると,作動流体がアルコールでラプラス長さの0.6程度の管径の場合,片側8ターンのMCL-HTDで作動したが熱輸送能力が1桁近く下がり,作動流体が水では,ラプラス長さの0.8程度の管径では作動しない例もあった.このことから,作動限界最小管径が存在する可能性が示唆される。
|